【イベントレポート】見えない展覧会　vol.1 「魔法をかけて」

SIAFラボのレクチャーシリーズ「見えない展覧会」が始まりました。普段札幌では触れる機会の少ない現代美術。その見方や楽しみ方は人それぞれですが、まずは何から見れば良いのか、どう見れば楽しめるのか、その入口となる情報を知る機会はさらに限られています。

このシリーズは「見えない展覧会」と題して、架空の展覧会を特定のテーマで構成。写真や映像、言葉によって作品を紹介するとともに、作品を楽しむ方法の一例を紹介していくシリーズです。

1回目のテーマは「魔法をかけて」。

蝋人形に命を与えたり、海に浮かぶ11の島々を603,870平米の布で包んだり、蟹の缶詰で宇宙を梱包したり、まるで魔法を使ったかのような現代美術作品群を、実際の展覧会を順路に沿って巡るように、5つのゾーンに分けてご紹介しました。

レクチャー当日、札幌の夏としては、珍しく湿度が高い日でしたが会場に用意した座席は満員。
レクチャーを担当する札幌国際芸術祭 SIAFラボマネージャーの斎藤ふみが、アーティストが魔法のようなことをどう実現していくのか、そもそも何をどう考えてそのような発想にいたるのか、当時のインタビュー映像や発言なども交えて一作品ずつ丁寧に紹介していきました。
今回のレクチャーは、手前で紹介された作品を踏まえて次の作品を見ると、理解がより深まる構成となっていました。それは作品の順序や話の流れが準備されているためで、展覧会をどう構成するか、その考え方を知る一例としても非常に面白い内容でした。

作品の最後に登場したのは、今回の会場である札幌市資料館。
ここの外壁は札幌軟石という札幌市南区で産出される石で作られています。札幌軟石は4万年前に起こった噴火によって流れ出た火砕流が固まってできたもの。考え方を転じれば資料館にいることは火山の中にいるようなものだとも考えられます。札幌軟石というキーワードから4万年前に想いを馳せることで、また1つ新しい魔法が生まれる可能性を提示しました。
参加者の皆さんに受付で配布された、自分が感じたことをメモすると自分だけのカタログができあがる白いノートと連動して、会場では、プロジェクターを使って、スケッチブックにテーマやアーティスト名が一文字一文字書かれる様子がライブで映し出されました。「見えない展覧会」をより楽しむ仕掛けが散りばめられていました。