S.I.D.E.

About this Project

S.I.D.E. は、パンデミックや持続可能性を巡って全社会的な価値観の変容が迫られる中、SIAFラボが発案する研究開発(R&D)とネットワーク型異分野コラボレーションのためのプラットフォームです。道内外のメンバーと共に、トリエンナーレ形式(3年に1度)で開催される札幌国際芸術祭の傍(サイド)を走る長期プロジェクトとして、アーティストが芸術作品を制作し、科学者が研究論文を書くだけではない新たな創造性を、北海道をフィールドに模索します。

タイトルである「S.I.D.E.」はプロジェクトが内包する様々な可能性に応じて、いくつかの単語の組み合わせとしてフレキシブルに使うことを想定し、決まった単語を固定していません。それは、ある特定の成果形態を設定することなく、プロジェクトが進むプロセスにおいて付随して発生する成果や広がりを注視する、オープンエンドなプラットフォームという、このプロジェクトが目指す姿を表したものです。

Side Effects 2022 - 2024

S.I.D.E. では、2024年の札幌国際芸術祭までの3年間を第一期とし、キュラトリアル・リサーチャーとして明貫紘子氏を、アーティスティック・リサーチャーとして中井悠氏を迎えます。

中井氏が研究を続けている、音楽家のデーヴィッド・チュードアが発案した、《Island Eye Island Ear》は、チュードアが E.A.T.のサポートを得ながら中谷芙二子らと1970年半ばから10年以上取り組んだプロジェクトで、孤島をまるごと楽器化するという構想に基づき、サウンドビーム、霧や凧などを用いて「島の自然を露わにすること」を目論んだものでした。並外れたスケールに加えて、自然と技術に対する特異な思想ゆえに未完に留まったこの壮大なプロジェクトの今日的な実現可能性を探ります。

また、中井氏は、サウンドビームや霧、凧といった《Island Eye Island Ear》の構成要素を、風という不可視・不可聴なものを露わにする媒体として捉える視点に立つと、そこに「影響」という概念が見えてくると言います。この「影響」という言葉をリンクとし、研究者らとの対話を重ねながらリサーチを続けていきます。「影響」という、それ自体が副作用(side effect)的な性格を持つ概念をテーマとして掲げながら、そこに生まれる Side Effects を有機的に取り込んでいきます。

ステートメント

目的に到達しようとする努力が生み出す、当初の目的に収まらないもろもろの帰結は副作用(side-effect)や副産物(by-product)などと呼ばれます。こうした付随的な効果は目的によってもたらされる一方で、それ自体として目的化できないという逆説を抱えています。だからこそ、目的地を目指した道のりの周縁(side)に浮かび上がる作用や産物を回収するのは、大抵の場合、未来の自分でなければ、遅れてやってくる他者なのです。いまから約五十年前に構想された《Island Eye Island Ear》という風変わりな題名を持つパフォーマンスが目指したのは、島内に張り巡らされたサウンド・ビームや霧の変化を通じて、それ自体として見たり聞いたりすることのできない「風」を観客が間接的に見聞きすることでした。十年越しの努力にも関わらず実現に至らなかったこの計画は、しかしながら多くの豊かな副産物を生み出しました。最近になって、当時のプロジェクト・メンバーとともにこの未完のパフォーマンスの実現可能性を再度考えはじめました。三年前にスウェーデンの孤島を再訪したことが思わぬ形で日本でのイベントに繋がり、そのイベントの予想外の帰結として札幌を拠点に三年越しのプロジェクトをはじめることになりました。いつしか、一度も上演されなかった幻の作品の実現を追い求めることが生み出す副産物の連鎖自体が《Island Eye Island Ear》という息の長いパフォーマンスの本性だという気がしてきました。そもそもチュードアたちが半世紀前に追い求めた「隠れた自然=本性(occult nature)」が知覚の周縁においてのみ露わになるある種の副作用だったとすれば、サイド・プロジェクトほどその再考にふさわしい上演形態はないのかもしれません。

中井 悠

風土は、気候や地形などの自然環境、そして、国や地球上での地政学的な位置や人々の振る舞いなど無数の要件が知覚できないレベルにまで複雑に絡み合い、影響を及ぼし合って形成されているといえます。それはコアとなる主体が特定されず、全体として流動的で完成形のないプロセスのようなものだと考えます。同様に、サイド・プロジェクトは札幌や北海道のあり様に食い込み、その形成プロセスに巻き込まれながらプロジェクト自体が変容していくことを受け入れたいと考えています。つまり、能動的でもなく受動的でもない、そのあいだを漂う中動的なアプローチがこのプロジェクトが動く・動かされるためのキーワードになるように思います。
さらに、サイド・プロジェクト第1期を起動させるためのモチーフとして、中谷宇吉郎の影響を受け、霧の彫刻家として知られる中谷芙二子がオリジナルメンバーで参加した未完の作品《Island Eye Island Ear》を取り入れます。同作品の再考とその実現可能性を探る過程は、北海道といういわば大きな島の特性(nature)を露わにすることへもつながると考えます。

明貫 紘子

主なプログラム

1. Youtube インタビュー ・シリーズ

マンスリーで全10回(予定)のインタビューを公開します。
中井悠氏とSIAFラボが隔月で担当し、CoSTEPのファシリテーションのもと研究者を中心にインタビューを実施します。二路線のインタビューが、互いに影響しながらそれぞれのトピックを掘り下げていきます。
ラボのYoutubeチャンネルで配信するほか、テキスト形式の記事として、CoSTEPのウェブサイトにも掲載していきます。

Youtubeチャンネル

2.連続イヴェント

夏季と冬季にゲストを迎え、トークやワークショップ、フィールドワーク、実験といったイベントを開催/公開します。

2022

2023

3.成果報告会

2024

Member

Credit

中井悠ーArtistic Researcher アーティスティックリサーチャー
明貫紘子ーCuratorial Researcher キュラトリアルリサーチャー

企画・運営

SIAFラボ

小町谷圭 / 石田勝也 / 船戸大輔 / 平川紀道
スーパーバイザー:久保田 晃弘

CoSTEP 北海道大学科学技術コミュニケーション教育研究部門

奥本素子(准教授)/ 朴炫貞(特任講師)

REFERENCES

EXHIBITIONS & EVENTS

Side Effects 2022-2024
IEIE, Reflected: Phase 2

Side Effects 2022-2024
IEIE, Reflected: Phase 1

SCARTS × SIAFラボ 冬の展覧会 2023
雪にまつわるエトセトラ

SCARTS x SIAFラボ 冬の展覧会, 都市と自然とデータとかたち

SCARTS×SIAFラボ 冬の展覧会 2022
都市と自然とデータとかたち