札幌国際芸術祭(SIAF(サイアフ))2017に向けて、いよいよSIAFラボが始動しました。SIAFラボは、札幌らしい芸術祭を実現していくために、「市民1人ひとりにとっての札幌」を様々な角度から考え、発見、発信していくプロジェクトです。初回となる今回は「SIAFパブリックミーティング」と題し7月4日と5日の2日間、ワークショップやトークセッション、シンポジウムなどのプログラムを行いました。
ダイジェスト映像
パブリックミーティング・オープニング/
ワークショップ 「コラージュ・さっぽろ あなたの「札幌」、教えてください!」
札幌市資料館1階のSIAFラウンジで行われたオープニングでは、創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会の会長である秋元克広札幌市長による挨拶と、SIAFラボマネージャー漆崇博から2日間に渡るプログラムの紹介が行われました。同スペースでは、来場した方それぞれが考える「札幌らしさ」を専用のカードに記入し会場に掲示する「コラージュ・さっぽろ」と題したワークショップを実施。たくさんの「札幌らしさ」が並びました。
トークセッション「SAPPORO STUDY part1—札幌らしい場所ってどんなところ?」
今回からシリーズで行われるトークセッション「SAPPORO STUDY」は「札幌らしさとは何か」がテーマ。今回は「札幌らしい場所ってどんなところ?」と題して、「場」を通して札幌らしさとはどのようなものかを参加者とともに話し合いました。
札幌の映画館「シアターキノ」を運営している中島洋さんにも参加していただき、シアターキノや80年代に中島さんらが作ったフリースペース「駅裏8号倉庫」などの場所の成り立ちが紹介され、それを参考にしつつ参加者が意見を交換。今回の参加者には道外出身の方が多く、それぞれの出身地と比べての札幌らしさ、札幌の良さが多く話題にのぼりました。札幌にずっと住んでいる方達は今まで考える事のなかった札幌らしさについて思いを巡らせ、当たり前に感じた風景や場所の中に気がつかなかった魅力があることを再認識するなど、1人で考えていては気づかないようなことを発見する機会になったのではないでしょうか。
「SAPPORO STUDY」は今回の内容はもちろん、「コラージュ・さっぽろ」に書き込まれた内容も取り込みつつ、今後2ヶ月に1回のペースで開催。次回は9月19日(土)「石切りが生んだ札幌の交通 -馬車、市電、そして地下鉄・LRT」と題して札幌の「交通」をテーマに開催します。
ワークショップ「ハンド・メイド・ジョウロ・ボットー自動水やりマシンづくり&プログラミング体験」
小学生以上を対象に行われた「ハンド・メイド・ジョウロ・ボットー自動水やりマシンづくり&プログラミング体験」は、植物が水を欲しがるタイミングで自動的に水やりを行うマシンを作るワークショップです。親子連れや大学生、植物を育てるのが趣味の年長者の方など、様々な年代の方がお気に入りの鉢植えを持ち寄り参加してくださいました。
今回のワークショップでは、初心者でも簡単に電子回路を使った作品を作ることができるArduino(アルデュイーノ)という基盤が使われました。参加者はまずArduino(アルデュイーノ)にLEDライトやモーター、ケーブル類を接続。パソコンからプログラムを入力することで、植物の状態に反応して光ったりモーターが動いたりする装置を作成しました。つづいて、実際に水を出すポンプの役割を果たす装置を、霧吹きやチューブ、水鉄砲など身近なものを使って制作しました。出来上がったポンプとArduino(アルデュイーノ)を接続して完成したものを、参加者の皆さんが持ってきた鉢植えに設置すると完成です。土に水が足りないと判断されると装置が反応しモーターが動くことで自動的に霧吹きなどから水が噴射され、水が充分になると装置が停止します。完成に至らなかった方は、少し時間をかけて引き続き制作を進めることが出来ます。1階のSIAF ラウンジでは、週2回(毎週木曜・土曜)の16時から「ラボの日」としてプロジェクトメンバーが滞在します。その日にどんなことができるのかは、ウェブサイトでお知らせしますので、自動水やりマシンづくりができる日には、是非SIAFラウンジにお越しいただき、制作を続けていただければと思っています。
ワークショップ「シェフ Watsonと拓(ひら)く北の味覚ーコンピューターと一緒に新しい郷土料理を創ろう!」
Watson(ワトソン)はIBMが開発したコンピューターで、2011年にクイズ番組で人間のクイズ王者を破ったコンピューターとして注目を集めました。そんなWatsonが現在挑戦しているのが料理のレシピ提案。シェフWatsonは単なる検索ではなく、9000以上のプロが作ったレシピと評価データ、成分データなどから、素材や調理方法も含め思いもよらないレシピを提示してくれます。
今回のワークショップでは、まずインターネットを通して使えるシェフWatsonの使い方を学び、そして彼が提案する、道産食材を使った2種類のスムージーレシピを実際に調理しました。なかなか思いつかないような食材の組み合わせによるスムージーレシピが提示され、「これは美味しくないんじゃないか?」と疑心暗鬼になりながらも、配られたエプロンをつけて調理。飲んでみると予想よりは美味しいのですが、まだまだ改善の余地はありそうなので、シェフWatsonが提示した他の材料候補を参加者で相談して、追加の食材を買い出し。新たな食材を使ったスムージーを飲んでみて、その味の違いを楽しみました。
また、SIAFパブリックミーティングのクロージングパーティーでは、札幌市澄川にあるイタリアンレスト
ラン「La fraschetta 純や」の山本純哉シェフが、シェフWatsonのレシピを元に作成した料理を提供。コンピューターが提示したレシピだけでなく、人間のシェフがそのレシピを見てさらに工夫をすることで、非常においしい料理が提供され、参加者は舌鼓を打ちました。「味」という今まで人間の専売特許だった感覚も、時代の変化に合わせコンピューターとともに考えることで、より世界が広がる可能性が秘められているのではないでしょうか。
ワークショップ「チラシから見える札幌の「今」 札幌のアートの「今」を知ろう!」
札幌市内では、どのような芸術文化イベントが開催されているのでしょうか。美術館やギャラリー、劇場などの文化施設で手に取ることができるチラシを通して札幌の今を感じる試みを行いました。ここ数ヶ月の間に集められたベントのチラシはかなりの量になりました。テーブルに広げられたチラシを、参加者はまず、大まかなジャンルに分類。それぞれの分類について改めて並べなおし、見比べました。
最初は音楽ジャンル。今回集めたものにはクラッシック系とクラブ系が多く、またそれぞれ、チラシのデザインに特徴があることがわかりました。クラッシック系はA4サイズ、片面印刷で、演奏者の写真などを使っているものが多く、対してクラブ系は紙のサイズがまちまちで小さめが多く、写真などは使わずグラフィックで作られたものが大半でした。それぞれチラシを手に取る場所、年齢層、音楽の種類による広報方法の違いを想像しつつ、これらのカテゴリーをまたいだイベントなどがないのだろうかなどが話し合われました。
演劇ジャンル、美術ジャンルについても話し合いが行われ、チラシから感じることを起点に、それぞれのジャンルがおかれた現状、さらには札幌の文化の中には批評性がほとんどないという視点まで話題が膨らみました。チラシを並べるだけでこれほど多くの話題がでるという予想以上の反響があり、今後も定期的に行ってみてはという意見もでました。
シンポジウム+パブリックミーティング「これからのSIAFへ向けて」
2017年に開催予定の札幌国際芸術祭2017へ向けて、3部構成のプログラムが札幌市資料館研修室で開催されました。会場はほぼ満席となり、予定の3時間でさまざまな意見が交わされました。
第1部は「SIAF2014を評価する」。札幌国際芸術祭では外部専門家で構成される「SIAF2014事業評価検証会」を作り、SIAF2014独自の事業評価手法を実行委員会とともに検討、それに基づいて検証を行っています。小田井真美さん(SIAF事業評価検証会札幌調査コーディネーター)の進行のもと、検証会メンバーの熊谷薫さん(デジタルアーカイブ・コーディネーター)と永井希依彦さん(デロイトトーマツコンサルティング合同会社シニアアナリスト)のお二人から、どのような評価手法を取っているかなどの報告と実際に行った評価の例示が行われました。
これらの検証結果は7月末を目指してまとめる作業に入っており、皆さんと報告書という形で共有していく予定です。
第2部は「芸術祭の独自性を考える」。日本国内だけでも数多くの国際展や芸術祭が開催されるようになり、その存在意義や目的も多様化していく中で、どのような独自性があり、SIAFがどうなっていくべきなのか、美術評論家の暮沢剛巳さんと横浜市民ギャラリーあざみ野主席学芸員で創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会アドバイザーの天野太郎さんをお迎えし、話し合われました。
最初に熊谷薫さんによる国内の芸術祭を俯瞰的に見たプレゼンをしていただき、それを受けてお二人それぞれの立場と経験からお話を伺いました。
第1部、第2部の様子
第3部は「第1回パブリックミーティングーSIAF2017へ向けて」。第2部までとは座席の配置を変えサークル状になり、来場者とともに次回の札幌国際芸術祭について話し合いました。来場者には、第1部、第2部の内容を踏まえ、札幌らしい芸術祭を実現するためのアイデアを、配布した用紙に記入していただき、そのご意見を参考にしながら進められていきました。
そもそも「地域性」と「国際性」は両立できるのか、という意見や、ススキノをもっと利用したらどうかなど様々な意見がでました。最後にはSIAF2014の「サッポロ・エホン・カイギ」に参加してくれていた小学6年生から次回の芸術祭でやってみたい企画や宣伝方法を提案していただき、終了しました。
数多くのご意見が集まり、全てを紹介しきれなかったのですが、今後継続していくSIAFラボなどでも参考にさせていただき、皆様と一緒に次回の札幌国際芸術祭を考えていきます。
今後のSIAFラボ
SIAFラボでは、今回始まった「SAPPORO STUDY」を始め、今年度8つのプログラムを展開します。また毎週木・土曜日は「ラボの日」と題してSIAFラボのプロジェクトメンバーが中心となり、特別なテーマやプログラムを設定せずに、その場で生まれた疑問や発見をもとに、知識や情報、考え方を伝え学びあう場を作ります。プログラム詳細については今後SIAFラボウェブサイト、チラシ等で随時発信していきます。皆様の参加を心よりお待ちしています。