吹雪とレーザーによる風の可視化

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毎年冬になると、「北海道の吹雪は、本州と比較にならないほど厳しい」といったSNSへの投稿や、道民の撮影した吹雪の画像が話題となります。吹雪の中でも、地表に積もった雪が風で舞い上がることで視界を遮るホワイトアウトは、気温の低い北海道において起こりやすく、注意が必要な現象のひとつです。自動車の運転中は特に注意が必要になる一方、自動車のヘッドライトに浮かび上がる雪の粒の動きは、まるで生き物のように複雑に変化して、時に魅力的な光景を見せてくれます。ホワイトアウトのような状況では、雪が視界を遮るため、雪の粒の一つ一つを目で追うことは不可能ですが、レーザー光線を面のように照射し、狭いエリアの雪の粒だけを照らし出すことで、ホワイトアウトの中の雪(風)の動き見ることができるのではないか。そんな思いつきによって、この実験を始めることになりました。この展示では、メンバーが夜中に吹雪を追い求めて車を走らせ、レーザーの向きや撮影方法を試行錯誤する様子をドキュメンタリー映像としてまとめると同時に、舞台演出などに用いるレーザー光線を用いて、吹雪をモチーフとした新たな映像表現の可能性を模索しています。北海道を大寒波が襲った今年1月25日を含め、4度の撮影がまとめられています。

SCARTSモールCで紹介しているS.I.D.E.プロジェクト(*1)が実現を目指す《IEIE》(*2)では、作品を構成する各要素にとって、「風」が大きな役割を果たします。北海道ならではの自然現象にあらためてフォーカスするこの実験は、Side Effects (副作用)をテーマに掲げて活動するS.I.D.Eが生み出した副産物のひとつです。

(*1) SIAFラボが、北海道大学 CoSTEPとSCARTSと共同で取り組む、新時代のR&D(研究開発)のためのプラットフォーム「S.I.D.E.」。2024年の札幌国際芸術祭(SIAF)2024に向けて、キュラトリアル・リサーチャーに明貫紘子、アーティステッィク・リサーチャーに中井悠を迎え、プロジェクト「Side Effects 2022-2024 」として活動しています。
(*2) 1970年半ばに音楽家のデーヴィッド・チュードアが発案し、芸術家の中谷芙二子やジャックリーヌ・マティス・モニエ、E.A.T.(Experiments in Art and Technology)らが取り組んだ、孤島を丸ごと楽器化する未完のコンサート計画《Island Eye Island Ear》の通称。

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Credit

ディレクション:小町谷圭、平川紀道(SIAFラボ)
撮影:小町谷圭、平川紀道、石田勝也(SIAFラボ)
レーザー設計:小町谷圭(SIAFラボ)
プログラミング:平川紀道(SIAFラボ)
テクニカルサポート:岩田拓朗(SCARTS)


EXHIBITIONS & EVENTS

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