除雪彫刻

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会場に置かれた4つの白い塊は、除雪車によって積み上げられた雪の塊を、iPad Proによる三次元計測によってデータ化し、発泡スチロールを産業用の切削機械で削って再現することで、彫刻作品(*1)に見立てたものです。 私たちは、除雪作業によって路肩に生まれる雪の形状を、積雪という自然現象と、除雪という都市機能の「あいだ」に生み出される特別なものとして捉えています。「除雪彫刻」は、そんな特別な雪の形状を、データロガーを通してとらえ、機械の手によって彫り刻んだ、現代のテクノロジーが作る具象彫刻ですが、同時に、データという本来は決まった形のないものを立体として表す抽象彫刻であるとも言えます。北国に住む私たちにとっては、見慣れたかちである「除雪の形」ですが、「データ」や「機械」、「彫刻」といった言葉とともに、暖かくニュートラルな室内(*2)で、あらためてその形を眺めてみるとき、あなたは何を思い起こすでしょう?

(*1)彫刻(ちょうこく)とは、木、石、土、金属などを彫り刻んで、立体的に制作された芸術作品のことですが、物の像を立体的に表すこと自体を彫刻と呼ぶ場合もあります。 彫刻の対象(モチーフ)は元来、人間や身近な動物など具体物でした(具象彫刻)が、20世紀になると、心象を表したもの(抽象彫刻)も多く制作されるようになりました。 現在では、表現が多様化し、従来の彫刻の概念では収まらないケースもあり、それらを「立体」、「立体アート」と呼ぶこともあるほか、表現が設置空間全体へ拡散したものは、特に「空間表現」や「インスタレーション」と呼び分けられます。

(*2) ニューヨーク近代美術館(MoMA)に代表される近代以降の美術館では、美術という制度自体の中立性を保ち、鑑賞の純粋性を求めた結果、白くて平坦(ニュートラル)な「ホワイトキューブ」と呼ばれる形式の展示室が多く採用されています。 ですが、その結果、「ホワイトキューブに置けば何でも作品に見える」という逆転現象に違和感を感じる現代美術作家も増えてきています。「除雪の形」は、白くて平坦な空間で「芸術作品」に見えるでしょうか?

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