このインスタレーションは、2020年の12月21日(冬至)から2021年3月20日(春分)までのデータを音や光に変換して、一つの空間に配置し、1200倍速の時間軸に沿って冬をプレイバックするものです。
展示空間に配置された、サブウーファーを含む10台のスピーカーには、気象台が観測した気温や日射量、降雪量や積雪量といった自然のデータと、チ・カ・ホ内で計測される人流量や除雪車の稼働量といった人的なデータが互いに交差するように割り振られており、各スピーカーは割り振られたデータに応じたサイン波を発しています。一つ一つの音は単純ですが、会場全体ではそれらが重なり合って複雑な音場を形作っており、観客の耳の位置に応じて多様な音像が生まれます。
床には、静止気象衛星「ひまわり8号」が赤外線域と可視光域で観測した雲のデータを映像化したものと、GPSによって計測された除雪車の位置情報をプロットしたものが異なる光源から投影され、相互に打ち消し合うかたちで重ね合わされています。観客は、自らの立つ位置によって変化する光と音の複雑な干渉の中に置かれ、展示空間の一部を感知するセンサーのような存在となります。
昼と夜を繰り返しながら、降雪量や積雪量、人流や除雪車が互いに呼応し、複雑に変化する光や音の様子は、自然だけのものでも都市だけのものでもない、抽象化された「冬」の様相であり、それらが渾然一体となった空間そのものを「かたちのない彫刻」と呼んでみると、「かたち」を扱ってきた彫刻という芸術形式をどこまで拡張できるのか、という芸術の問いも見えてきます。