2020年12月から2021年3月まで、札幌市で稼働した除雪車のうち、GPSを搭載した約500台の位置情報が1枚のプリントに仕上げられています。約1秒間隔で保存された位置情報は、テキスト形式で30ギガバイトに及びます。この画像は、それらを線でつないでいくというシンプルな方法で描かれたものですが、ピクセル数にして、縦横45,000ピクセル以上の巨大な画像であり、4Kディスプレイに換算すると120台以上の画素数を持ちます。
スマートフォンの地図アプリなどで日常的に利用するGPSですが、そのデータの精度は、その地点から通信可能な人工衛星の数に左右されるため、データ自体が途絶えることによって、トンネルや地下道といった電波を遮断するものの存在を知ることができます。GPSの測位データは、一般的な道路地図とは一味違った地理的な情報を含んでいます。
こうした人工衛星を用いたテクノロジーならではの特徴を持つGPS測位データが、映像機器の解像度では表現不可能な繊細さで描き出す冬の札幌市の姿は、降雪という自然現象と、それに応じて機能する除雪という都市インフラが、ひと冬という時間をかけて共同制作する特殊なドローイングと言えるのかも知れません。